
世界のもう毒蛇ランキング10位以内に入るほど、危険な毒を持つハブ。噛まれると死に至ることもあるもう毒蛇なだけに、厄介な存在です。そのため、沖縄ではハブ除けのおまじないというものもありました。
そもそもハブってどんな毒蛇?
ハブは、漢字で「波布」と書きます。日本の固有種なのですが、沖縄本島周辺や奄美諸島などの南西諸島に分布しています。大人の個体は、全長が1~2mであり、最大で241㎝もあるハブも確認されています。オスはメスよりも体が大きいのが特徴で、体重も1㎏を超えます。
ハブの毒
ハブの毒は、ニホンマムシよりも弱いといわれています。それでも、毒牙が1.5㎝と大型で、1回噛まれると、平均約20mg、最大だと100mgの毒液を排出します。
噛まれた時の症状
ハブに噛まれると、患部には、膨張や疼痛が起こります。噛まれた場所によっては、運動障害が残るほどの後遺症が出る場合もあります。
その他にも、嘔吐や腹痛、下痢、血液の低下、意識障害などを引き起こし、場合によっては急性腎不全を引き起こすこともあります。さらに、命の危険を伴うアナフィラキシーショックを引き起こすこともあります。
実は沖縄ではハブは重宝されていた?
ハブ除けのおまじないがあるほどですから、ハブは、よほど沖縄では嫌われる存在なのかとおもいそうなのですが、実はその逆。農業が主要な産業だった沖縄では、農作物や家屋に甚大な被害を及ぼす「ネズミ」の方が厄介な存在であり、厄介者のネズミを退治してくれるハブは、非常に重要な存在なのです。それだけに、毒さえなければ、ハブほど役立つ動物はいないといわれるほどだったとか…。
ただしハブは、ネズミを捕まえるために家の中入り込んでくることも度々あるため、身の危険は常にすぐ近くにあり、「役には立つけれど、決して近くには来てほしくない存在」でしかなかったのです。
野山でハブに遭遇しないためのおまじない
野山でハブに遭遇しないためのおまじないの存在は、沖縄に伝わる昔話や伝説の中でよく登場します。そのひとつが、『南島説話』(佐喜眞興英著)で紹介されています。
「ホギハラ ホギハラ ドケナリ サイナリ ギナ主 内孫ドゥ
白仏言世尊 アヤマダラマダラ 我ガ行ク先キニ 立ツナラバ
山辺ノ主ニ語ッテ聞カソウ、儀方」タイトル:南島説話 著:佐喜眞興英
どうやらこの長い呪文を唱えると、ハブに噛まれることもないといいます。さすがにこれだけ長い呪文ですから、ハブと遭遇した瞬間にとっさに口にするのは難しいような気もします。
ただしこの呪文は、その昔、ハブを助けたギナ主が、恩返しとしてハブから直接教えてもらったハブ除けの呪文なのだとか…。ハブ自らが、自分たちを避けるために効果がある呪文として人間に教えてくれたわけですから、その効果は相当高いのでしょうね。
沖縄にはハブ除けの節句がある
沖縄の民家には、ハブ除けのお札が建てられていることもあります。このお札には、「白佛言信尊儀方」の七文字か書かれており、旧暦の5月5日に行われるハブ除けの節句でたてます。
もちろんハブ除けの節句にはやり方があり、午の時(午後0時)に木札に「白佛言信尊儀方」と書き込み、それを午の時の間に家の敷地内に差し込みます。こうすると、ハブだけでなくネズミや蚊、虫なども家の中に入ってこないのだといいます。
サトウキビ畑で見かけるハブ除けのお守り
サトウキビ栽培が盛んな沖縄では、サトウキビ畑の中でハブに遭遇することもあります。ハブはネズミを餌にしているのですが、ネズミはサトウキビが大好き。そのため、サトウキビを狙うネズミを、ハブが待ち構えているというわけです。
でも、ハブの毒は人間にとっても危険。そのため、サトウキビ畑では、今でも「白佛言世尊儀法」と書かれた角材をたててハブ除けとしています。