
与那原町というと大綱曳が有名な街ですが、実は聖なる水に守られたパワースポットがたくさんある街なのです。しかも、歴史のある場所が街の中心部に集まっているため、隠れた観光スポットが街の至る所にあるのです。
天女が舞い降りた場所【御殿山(うどぅんやま)】
与那原には海に向かって流れる川があります。その川には「世持橋(ゆむちばし)」と呼ばれる美しい橋がかけられています。
この橋を渡ると与那原町コミュニティセンターがあるのですが、ちょうどその裏側にあるのが「御殿山(うどぅんやま)」と呼ばれるパワースポット。
平日にもかかわらず、ひっきり無しにこの場所を訪れる参拝者います。
この日も近くに行ってお参りをしようと何度かトライしてみたのですが、そのたびにお祈りをする人の姿があり断念。
なぜ、この場所が地元の人の祈りの場所になっているかというと、その昔、この場所に天女が降り立ったという話が起源にあるようです。
そのため、この場所は琉球王朝時代から大切な拝所とされてきました。今でこそ小さな祠でしかないのですが、戦前には立派なお宮が建てられていたといわれています。
この場所がパワースポットといわれるにはもう一つの由来があります。
かつて沖縄が「琉球」と呼ばれる独立国だったころ、国と王様を霊力によって守護する役目を果たす聞得大君(きこえのおおきみ)がいました。
聞得大君は代々王様の妹または直系血族の女性が務めており、琉球王国最高の神女とされていました。
聞得大君は、即位する時に「御新下り(おあらおり)」という儀式を行います。
そのときには御殿山に聞得大君が休むための仮御殿が建てられ、その場所で天女の力をいただく「お水撫で」の儀式が行われていました。
そんな御殿山は、聞得大君と国王が沖縄県内に点在する聖地巡礼の旅に出かける時の最初の休憩場所でもありました。
そもそも聖地巡礼の旅は首里城のすぐ近くにある園比屋武御嶽が最初の拝所なのですが、その場所から最も遠い場所にあるのが御殿山。
この場所で一息ついた国王と聞得大君たち一行は、沖縄本島最高の聖地といわれる「斎場御嶽」に向かいます。
こうした歴史もあり、御殿山は聖地巡礼・東御廻り(あがりうまーい)で2番目に訪れる拝所とされています。
- 住所:島尻郡与那原町与那原658
- 見学:自由見学
- 駐車場;与那原町コミュニティセンターの駐車場が利用できます。
天女の産湯にも使われた子授かりの水【親川】
神話の時代に御殿山に降り立った天女にまつわる場所はほかにもあります。それが「与那原親川」。
なんでも御殿山に降りてきた天女のお腹には御子が宿っていたといいます。そのためその御子が生まれた際に産湯として使われた水が与那原親川というわけです。
そんな親川の水は「子授かりの水」といわれています。
子供に恵まれず悩んでいた女性が親川の水を飲むと、不思議なことにそれからしばらくして子供に恵まれるといわれています。
そのため、地元では今でも子供が欲しいと望む女性の姿を見かけることがあります。
また、親川の水には天女の霊力が宿っているという話もあります。
親川の水を額につけると天女の霊力が授かるといわれているため、県内各所からこの聖なる水を汲みにやってくる人が絶えないといいます。


親川は与那原町綱曳資料館の敷地内にあります。資料館には親川の不思議な霊力に関する資料も展示されています。
さらに、親川の水を求め県内外から多くの人が毎日のようにこの場所を訪れるため、綱曳資料館を訪れた人には天女の力が宿る親川の水が無料でプレゼントされます。
- 住所:与那原町与那原(与那原町立綱曳資料館敷地内)
- 見学:自由見学
沖縄の鉄道の歴史がわかる【軽便鉄道与那原駅舎展示資料館】
かつて沖縄には「ケイビン」と呼ばれた鉄道がありました。
軽便鉄道には全部で3路線あり、その一つが与那原駅を拠点とする与那原線です。
軽便鉄道の駅は「有人駅」「無人駅」「停留所」の3つがありました。
有人駅は人と物が集まる主要拠点でしたから規模も大きく、さらに駅周辺には鉄道を利用する人々のための宿や料亭街などが立ち並ぶ繁華街が広がっていました。
実は与那原駅も有人駅であり、駅周辺を中心に活気あふれる街だったのです。
ちなみに、現在の建物は2代目与那原駅舎を再現したものです。
初代与那原駅舎は木造だったのですが、2代目は沖縄県内の鉄道駅舎で唯一の鉄筋コンクリート造り。
沖縄戦によって甚大な被害を受けた2代目駅舎でしたが、奇跡的に崩壊は免れます。
ただ被害は甚大でしたので、焼け残った柱と壁だけを残し改築します。
その後、沖縄に鉄道が復活しなかったこともあり、与那原駅舎は役場などに再利用されることになります。
現在はその当時の建物を取り壊し建て直しされたのですが、今でも資料館の裏側には沖縄戦にも耐え抜いた9本のコンクリートの柱が残されています。
資料館には軽便鉄道に関する資料だけでなく、かつて与那原駅を中心に活気あふれる街だったことを示す貴重な写真なども展示されています。
- 住所:与那原町字与那原3148番地の1
- 開館時間:10:00~18:00
- 休館日:毎週火曜日、1月29~1月3日
- 入館料:町内/無料、町外/小学生以下・無料、中学生以上・100円
与那原町はまだまだ魅力満載の街だった
与那原町は現在埋め立て地に「東浜」と呼ばれるマリンタウンがあります。
でもかつてその場所には美しい海と浜があり、大綱曳も浜で行われていました。
さらに同じく与那原の浜は、のちの昭和天皇が東宮殿下時代に上陸した場所でもあります。
海から見える大きな山には「与那原テック」と呼ばれる沖縄で最初の遊園地がありましたし、今では糸満市西崎に拠点を移している「まさひろ酒造も」もともとは与那原の街の中に酒造所がありました。
今と昔が混在しながらも、少しずつ変化していく与那原町。
そんな与那原を散策するなら、昔ながらの下町をのんびりと歩いてみるのがおすすめ。
のんびりと過ぎていく時間の中にひっそりとたたずむ史跡たちを眺めていると「変わらぬ風景は必ずあるのだ」ということを静かに訴えているようにも感じます。